フェニックスバトル25(その1)
メインイベント 58.0 Kg契約 8回戦
○ 東洋太平洋10位 細野 悟(1R1分19秒KO)
× 東洋太平洋2位 ペッチトンクーン・シュプラカイファー(タイ国)
【インサイドストーリー】
デビュー以来8連勝、7連続KO勝ちをマークし、新春の日本 対 メキシコ対抗戦においても、初のメキシカンに憶することなく、見事なKO勝ちを飾るなど、めざましい活躍を見せる細野 悟の初メインとあって、会場の横浜文化体育館は、かなりの盛況を見せていた。しかも今回の相手は、現役のタイ国王者で、東洋太平洋ランキングでも上位(2位)にランクされているだけに、好試合が予想され、ファンの期待はいやがうえにもヒートアップ。最高の雰囲気の中で、メインイベンターの登場を待ちわびていた。
だがそんな中、細野陣営は非常に重苦しいムードに包まれていた。実はこの日、細野は致命的なハンデを抱えて戦うことを余儀なくされていたのだ。
2週間前、細野は今回の試合に向けて、実戦スパーリングを行っていたのだが、その際に細野の強打に防戦一方だった相手選手が、強引なクリンチで必死にもがき、細野の左腕を(ヒジを伸ばした状態で)絞め上げたため、左ヒジ靱帯が伸びきってしまったのだ。そのため、細野は試合までの大事な仕上げの期間、まったく練習できなかった。
事態を重く見た大橋会長は、試合中止もやむなしと覚悟を決めていたが、「順調に回復しているので、やらせて下さい!」とアピールする細野の心意気に負け、イチかバチかの賭けに出る。だが実際には、試合の2〜3日前まで拳を握ることさえままならない状態だった。それでもメインの穴を空けてはならないとする責任感と、スパーリングパートナーをかばいたい一心からの回復アピールだったと、事情を良く知る八重樫 東が後日、語ってくれた。
【試合経過】
このようなマイナスのハンデを背負いつつ、リングに登った細野だったが、その姿は意外なほどに落ち着き払い、雄々しい貫禄に満ちあふれていた。その勇姿からは、いま彼が背負わされている苦痛を全くと言っていいほど、相手も観客もうかがい知ることはできなかった。
ゴングが鳴ると両者はのっけから打ち合いにでる。2人の体が交錯するたびに、そのスピードと迫力に観客から驚嘆のため息がでる。細野の右ボディストレートから、痛みをこらえての左フックがペットンカムの顔面をとらえる。手応えはあったのだが、全く動じていない。
「コイツかなり強い!」と感じつつも、カサにかかって攻め込んでくるペットンカムに一瞬のスキが生じたのを細野は見逃さなかった。軽いパンチだが、絶妙のカウンターで左のショートフックが顔面をとらえると、ペットンカムはストンッと尻モチをついて倒れた。ダメージこそ与えていないが、見事な「技あり」だ。
しかし、「全然、効いていない!」とばかりに、ペットンカムは、余裕の表情で態勢を整えてくる。既に左腕はかなりしびれており、これ以上長引けば完全に使えなくなる。
「なんとか早く倒さないと!」という悲壮な決意から、細野はもう一歩果敢に踏み込み、「今度こそ!」とばかりに右ストレートから左フックを顔面に返す。ガッツンとかなりの手応えを感じたが、ペットンカムは多少ぐらついた程度で、表情ひとつ変えない。
万策尽きたかと思われたその瞬間、絞りに絞り抜いた最後の一撃、左ボディアッパーがペットンカムの右脇腹に鋭く食い込む。「ドスン!」という鈍い音が会場全体に響きわたり、リング上ではペットンカムが腹を抱えて悶絶していた。レフェリーは、カウントを数えるまでもなく試合を止めると、細野の勝利を宣告した。
絶対的な不利な状況を不屈の闘志で覆し、完璧な形でメインイベンターの重責を果たした細野。今後も先輩八重樫とともに、大橋ジム第2世代の柱として大いに期待できそうだ。
(C) OHASHI BOXING GYM